お知らせ

神戸市室内管弦楽団に寄せられたメッセージ

これまで共演いただいた方や音楽関係者の方から神戸市室内管弦楽団にメッセージが寄せられましたので、ご紹介します。

 


 

お詫び

2026年6月4日に当ホームページにて公開いたしました「エマニュエル・パユ氏からのメッセージ」につきましては、関係者に事前の確認を行わないまま、楽団内のウェブサイトにて誤って公開された状態となってしまいました。
関係者の皆様にご迷惑をおかけしたことを謹んでお詫び申し上げます。あらためて、関係各所に確認のうえ、その内容を以下のとおり公開いたします。

 

The Kobe City Chamber Orchestra should now blossom into maturity
-Emmanuel Pahud Flutist

このメッセージは神戸市長への公開書簡という形式で寄せられました

          Open Letter to the Mayor of Kobe City

Very respected Mr. Mayor,

Let me introduce myself : I am Emmanuel Pahud, Flute Soloist, 1st Prize Winner at the 2nd
Kobe International Flute Competition in 1989, and 1st Prize Winner at the 53d Geneva
International Competition in 1992, and Solo Flutist at the Berlin Philharmonic Orchestra since
1992. I am an exclusive artist with Warner Classics for my over 50 recordings, and as well
board member of the Berlin Philharmonic Foundation and of the Daniel Barenboim
Foundation.

I heard about the plans of your municipality to stop supporting the Kobe City Chamber
Orchestra in March 2028, and would like to share with you a couple of thoughts that vigorously
oppose to such a decision.

As an internationally touring artist, and as an active board member of private and public
cultural foundations, I have been part of many meetings with great Artists, Bankers and
Politicians having all in mind how to elevate the access to citizens to one of the greatest forms
of culture that mankind has created, the performing arts, or more particularly, our so-called
“Classical Music”.

We have been able to observe, beyond the very realistic reality of efforts that every township
has to do in order to balance their budgets, the disastrous effects of “cutting down” on the
things that are working, rather than building upon them and rationalizing them.

We hear that Kobe City is expecting a new concert hall in 2028, and another middle-sized one
in 2030. Whereas these halls could be the perfect home for Kobe-grown cultural events such as
the Kobe City Chamber Orchestra, such a timing to dismantle that very own orchestra would
turn these halls into empty shells , that would need to go shopping for shows that can be seen
anywhere else , thus actually making the Kobe City own cultural in performing arts shrink, and
eventually disappear.

The Kobe City Chamber Orchestra has a nearly half-a-century history, establishing itself as the
finest of its kind in Japan, collaborating with great artists artists including those from music
capitals such as Vienna or Berlin. I had myself the pleasure to perform lately in July 2025 as a
soloist with KCCO, and deeply enjoyed this collaboration, that brought joy to Kobe Bunka Hall,
filled by citizens of Kobe and Kansai area that came to celebrate together, as part of the
fantastic cultural events around the internationally acclaimed Kobe International Flute
Competition.

I also run a summer festival in Salon-de-Provence in southern France since 1993, and I have
seen many elections that brought new faces that questioned the existence of such classical
performing arts, but all of them have very quickly identified and understood that their city
could never earn such visibility and excellence in image, by spending the money in marketing ,
social media and advertisement, nor earn the same artistic quality and profile.

Soon the KCCO should celebrate its 50th Anniversary, and rather than disappear, it should now
blossom into maturity, becoming the resident orchestra of your new Concert Hall, anchoring it
in the lively scene of Kobe’s offerings for its own citizens.

Importing and presenting foreign shows could still happen, alongside of the week-by-week
programming of the KCCO.

I beg you to take the opportunity to think of an even bigger “Kobe message”, and use the
significance, authority and history achieved in Classical Music by the Kobe City Chamber
Orchestra, alongside the Kobe International Flute Competition in the last decades, , thus
projecting the name of Kobe as an inspiration for any form of Arts.

My first visit to Japan was in 1989 for the Kobe International Flute Competition, thanks to the
support from the French government that funded my trip, having recognized both my potential
and the quality of the Kobe International Flute Competition. This has been my first and most
happy contact with people and musicians in Japan, and in my heart, I will always have a special
feeling for the Kansai area and more specifically for Kobe where I discovered Japanese people
and culture, played in the finals and in the gala concerts with the KCCO .

I call to you, but also to every music lover, to every proud Kobe Citizen, to every musician and
music lover in Kansai and further in Japan, to support the future of the Kobe City Chamber
Orchestra for it to blossom and carry the name of Kobe with pride in the cultural world.

I am sorry to have taken so much of your precious time, if you have been reading till the end of
this letter, but believe me, I took the time to write it because it matters to me, and to the world
I belong to.

With respectful regards,


Emmanuel Pahud
Zurich , 26 May 2026


[翻訳]

神戸市室内管弦楽団は円熟へと花開くべきだ
-エマニュエル・パユ フルート奏者

謹啓 神戸市長様

自己紹介をさせていただきます。フルート奏者のエマニュエル・パユと申します。1989年に第2回神戸国際フルートコンクールで第1位、1992年に第53回ジュネーヴ国際音楽コンクールで第1位を受賞し、同年よりベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席フルート奏者を務めております。これまでに50点を超える録音をワーナー・クラシックスより発表しており、あわせてベルリン・フィルハーモニー財団およびダニエル・バレンボイム財団の理事も務めております。

貴市が2028年3月をもって神戸市室内管弦楽団への支援を停止する計画であるとうかがい、その決定に疑義を呈する立場から、いくつかの考えをお伝えしたく存じます。

私は国際的に演奏活動を行う芸術家として、また民間および公的な文化財団の理事として、多くの優れた芸術家、金融関係者、政治関係者と共に、いかにして市民が人類の生み出した最も優れた文化の一つである舞台芸術、とりわけ「クラシック音楽」に触れる機会を高めるかを議論してまいりました。

どの自治体も財政均衡のために現実的な努力を求められることは承知しております。しかし同時に、うまく機能しているものを発展させ合理化するのではなく、ただ「削る」ことが、いかに深刻な結果をもたらすかも私たちは見てまいりました。

神戸市は2028年に新たなコンサートホール(事務局注:多目的ホール)を、さらに2030年(事務局注:以降)には中規模ホールを迎える予定とうかがっております。本来であれば、それらのホールは神戸市室内管弦楽団のような神戸発の文化事業の理想的な拠点となるはずです。その一方で、まさにその時期に自前のオーケストラを解体してしまえば、新ホールは中身のない器となり、どこでも見られる公演を外から買い集めるしかなくなります。それは神戸市独自の舞台芸術文化を縮小させ、やがて消失へと向かわせることになりかねません。

神戸市室内管弦楽団は半世紀近い歴史を有し、日本における同種の楽団の中でも最良の存在としての地位を築いてきました。ウィーンやベルリンといった音楽都市の芸術家たちとも共演を重ねてきた楽団です。私自身も2025年7月にソリストとして共演する喜びに恵まれ、神戸国際フルートコンクールという国際的評価の高い催しの一環として、神戸文化ホールに集った神戸・関西の皆様と喜びを分かち合うことができました。

私はまた、南フランスのサロン=ド=プロヴァンスで1993年以来、夏の音楽祭を運営しております。その中で、多くの選挙を経て新しい政治家が登場し、クラシックの舞台芸術の意義に疑問を呈する場面も見てきました。しかし彼らは皆、ほどなくして、自分たちの都市がこれほど目に言える形で卓越した評価を、単にマーケティングやソーシャルメディア、広告に予算を投じることだけでは決して得られないこと、また同等の芸術的質や存在感もそこからは生まれないことを理解しました。

まもなく神戸市室内管弦楽団は創立50周年を迎えるはずです。いま必要なのは消滅ではなく、円熟へと花開くことです。新しいコンサートホールのレジデント・オーケストラとして位置づけられ、神戸市民のための活気ある文化の核となるべきです。

もちろん、海外や他地域からの優れた公演を招聘し上演することは、神戸市室内管弦楽団による継続的なプログラムと並行して十分に可能です。

どうかこの機会に、さらに大きな「神戸からのメッセージ」を構想していただきたいと願っております。神戸市室内管弦楽団と神戸国際フルートコンクールがこの数十年で築いてきたクラシック音楽における意義、権威、歴史を生かし、神戸という名をあらゆる芸術のインスピレーションとして世界へ発信していただきたいのです。

私が初めて日本を訪れたのは、1989年の神戸国際フルートコンクールのためでした。私の将来性と神戸国際フルートコンクールの質の高さを認めたフランス政府の支援により渡航が実現しました。これは私にとって、日本の人々や音楽家たちとの最初の、そして最も幸福な出会いとなりました。関西、とりわけ神戸は、私が日本の人々と文化に触れ、決勝やガラ・コンサートで神戸市室内管弦楽団と共演した地として、これからも特別な思いを抱き続ける場所です。

私は市長様に、そしてすべての音楽愛好家に、誇りある神戸市民の皆様に、関西そして日本各地の音楽家と音楽を愛する方々に、神戸市室内管弦楽団の未来を支えていただくよう心より呼びかけます。この楽団がさらに花開き、文化の世界において神戸の名を誇り高く掲げ続けることを願っております。

長文にて貴重なお時間を頂戴いたしましたことをお詫び申し上げます。もしこの手紙を最後までお読みくださったのであれば、私がこれほど時間をかけてこの書簡を書いたのは、この問題が私にとって、そして私の属する世界にとって、それほどまでに重要だからであるとご理解いただければ幸いです。

 

敬具
エマニュエル・パユ

2025年7月12日(土)エマニュエル・パユ プロデュース KOBE国際音楽祭2025 オープニング・コンサート/神戸文化ホール大ホール
指揮:アンドレアス・オッテンザマー  企画・フルート:エマニュエル・パユ ほか

 

オーケストラは街を豊かにするために、人々が町に集まるために、底知れない可能性をもっている 
-岩田達宗 演出家

管弦楽団、つまりオーケストラの歴史はいつ始まったのか?

三千年前です。三千年もの昔、ギリシャの古代劇場で行われていたギリシャの古代演劇では最大で3万人もの観客を前にお芝居が上演されていました。それほど大勢の観客にどうやって俳優はセリフを聞かせることができたのか?現在と違ってマイクなど存在しない。人間の肉体の力による肉声だけで、どうやって?

もちろん優れた俳優の鍛え上げられた発声法や発音の技術は大前提です。でもどんな優れた肉体と技術をもった俳優でも、その肉声だけでは3万人もの観客には届きません。

そこに必要なものは音楽でした。ギリシャ古代演劇ではセリフを音楽として歌っていたのです。つまり俳優とは歌手であり、演じられていたお芝居は音楽でした。

オーケストラとはその時に俳優である歌手の伴奏として、この時に生まれたものです。そしてオーケストラは三千年の長きにわたって姿を変え、形を変えて現代に受け継がれてきました。

ギリシャの古代の劇場に3万人もの人が国境を超えて集ったように、ギリシャの古代から現代に至るまで、オーケストラはその町に沢山の人を集めるシンボルとして存在してきました。オーケストラがその町にある、ということは、その町は人々が豊かに集まる町だ、という証に他ならなかったのです。

演奏会の観客が集まるだけではありません。オーケストラには沢山の楽器が集まります。だから沢山の演奏家が集まり、そんな演奏家に学ぶ若者たちが集まります。多角的に音楽を愛好する多くの人々が、より色々な形で音楽に参加できる。多角的に、色々な方向で、色々なやり方で音楽を語るものも集まる。

もちろんオーケストラとそこに所属する人たちの努力は不可欠です。でも、オーケストラは街を豊かにするために、人々が町に集まるために、他の何者にも変え難い、底知れない大きな可能性を持っていると思います。

それは経済効率や利益追求にしか目に入らない人たちには理解出来ないことかもしれません。

神戸室内管弦楽団は素晴らしい歴史と実績を持つ素晴らしいオーケストラです。私は神戸文化ホール50周年「ファルスタッフ 」で深くこのオーケストラの素晴らしい音楽に感動しました。そんなオーケストラを簡単に無くしては絶対になりません。絶対に我々はこのオーケストラを手放してはなりません。それは取り返しのつかない大きな損失となって未来に大きな負債となるでしょう。

私はオーケストラを存続させるための努力を願うばかりです。生まれ育った神戸の未来のために、そのための力添えは惜しまないつもりです。

2024年12月21日(土)神戸文化ホール開館50周年記念オペラ ヴェルディ《ファルスタッフ》 プレトーク


まさに“生きた音楽”そのもの

-加耒徹 声楽家

神戸という街は、私にとって特別な場所です。

キャリアを築き始めた頃から定期的に神戸を訪れ、自分自身を成長させてくれた街でもあります。そこにはいつも、温かな拍手が待っていました。

特にここ最近は、 神戸市室内管弦楽団 の皆様と音楽を共にする機会に恵まれ、そのたびに会場を包む和やかな空気が強く印象に残っています。

室内管弦楽団ならではの、一人ひとりの個性が際立つ演奏。そして、その個性がひとつの音楽へと結実していくライブ感。その中で演奏していると、音楽家である喜びを改めて実感します。

以前、オペラハイライト公演「コジ・ファン・トゥッテ」に出演した際には、オーケストラの後ろにアクティングスペースが設けられ、楽団の皆様の一挙手一投足を間近に感じながら、楽しく芝居をさせていただきました。

さらに2025年3月には、ゲストソリストとしてモーツァルトのアリアを歌わせていただきました。登場人物の喜怒哀楽が鮮やかに描かれた作品の世界の中で、背中から聴こえてくるサウンドは、まさに“生きた音楽”そのものでした。

そして何より、会場のお客様が生き生きとした表情で音楽を受け止めてくださっていたことも、忘れられません。

このたび、そのオーケストラが存続の危機にあるという報道に接し、私自身、大きな驚きとショックを受けています。

これまで積み上げてきた神戸の大切な財産のひとつが失われるということは、単に演奏会が減るということではありません。

それは、市民の皆様、そして神戸を愛する音楽家たちが長い年月をかけて育ててきた文化基盤そのものが失われてしまうということだと思います。

どうか今後、支援の輪がさらに広がり、地域に根ざした音楽文化が守られていくこと、そして神戸という街が、これからも芸術の街として発展し続けていくことを心より願っております。

2025年3月1日(土)神戸市室内管弦楽団 Selection Ⅵ『プラハへの愛』/神戸市立東灘区文化センター うはらホール
〈演奏曲〉歌劇《フィガロの結婚》KV492より 序曲/もう飛ぶまいぞこの蝶々/伯爵のアリア

 

未来の中の今を見つめていかなければ
-小山実稚恵 ピアニスト

今回、神戸市室内管弦楽団の未来に暗雲が垂れ込めているというニュースが流れました。何という事だろうと思うと同時に、音楽家として何とかしなければならない、と思いました。なんとしてもこの貴重な音楽の火を絶やすことなく未来に繋げなければならない。今だけを見つめるのではなく、未来の中の今を見つめていかなければと感じています。

神戸市室内管弦楽団の活動が今後ずっと継続できることを祈り、それを信じております。

2024年6月15日(土)神戸市室内管弦楽団 第163回定期演奏会「果てなき道へ…」/神戸文化ホール大ホール(©米田フォト)
〈演奏曲〉ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 作品37

 

音楽は記憶と連結し、思い出をつくる
-堀朋平 音楽美学者

 いちばん大切な風景は? そう問われたら、兵庫区の都由乃町にある狭い路地を挙げよう。ここで少年時代の1年半を過ごした私にとって、あの坂と階段ばかりの町並みは決して色あせない。シラーの言葉を借りれば「心情を伴奏する風景」なのだ。

 あれから30年あまり。音楽美学者となった私は、拠点=大阪とのご縁も重なり、神戸市室内管弦楽団からレクチャーや解説の仕事をよくいただく。鈴木秀美さんとは対談を重ねるうちに、電話やメールでシューベルト話に興じるほどに。

 秀美さんとの対談のあとは、時間があればタクシーで10分ばかり足を延ばして、故郷をしばし散策。小学校は商業施設に変わってしまったけれど、その界隈は変わりようがなく、いつも私を迎えてくれる。

 神戸文化ホールで秀美さんが振るハイドンとシューベルトには、特有の騒めきがある。この騒めきには、私の30年ぶんの年月が詰まっていると感じられる。何を大げさな、と思われるかもしれない。でも音楽はそのようにして自在に記憶と連結し、事後的に思い出を作ってくれる。だからいいのではないか。

 川口成彦さん(本サイト)のひそみに倣うわけではないが、アニメ作品『攻殻機動隊SAC_2045』(2020-22)が描くように、これからはノスタルジアが人間の宝となるだろう。自分史と結びついた土地の匂いが。そんな場を消去する決定が、将来の人間たちから何を奪うことになりうるのか、私たちはよくよく考えなくてはならない。

鈴木秀美×堀朋平 解説対談|第171回定期演奏会『大いなる旅立ち』/神戸文化ホール

 

神戸市室内管の出演を経験して、今の自分がある
-大澤明 1986〜1993年在籍チェロ奏者

 私が大学3回生の時に合奏団が出来た。高嶺の花で練習のためのエキストラに呼ばれて行ったら隣の人と指揮者が喧嘩になり、隣の人が退場して私がチェロ1人になって緊張した。後に帰国したばかりの鈴木雅明さん、出国する前の鈴木秀美さんと常に音楽が出来たのはラッキーだった。

 ツアーや数多くの修羅場の様な怖い演奏会を経験して今の自分があります。

 ここ最近もエキストラに呼んで頂き喜んでいた矢先の騒動、神戸市だけでは無く音楽史の上でも日本の宝の室内管弦楽団が【存続】しますように!

 

 

 

このオーケストラが持つポテンシャルは稀有
中江早希 ソプラノ歌手|布施奈緒子 メゾ・ソプラノ歌手|櫻田亮 テノール歌手|氷見健一郎 バス歌手

 私たちは2025年11月、神戸市室内管弦楽団の皆様とベートーヴェンダブルビル ”ミサ・ソレムニス”、”第九”公演でソリストを務めました。
 この度、本団体が解散の危機に直面しているという報に接し、共に舞台を創り上げた仲間として、どうしてもお伝えしたいことがあり、筆を執りました。

 私たちは歌い手として、様々な団体と共演を重ねております。その目から見ても、このオーケストラが持つポテンシャルは極めて稀有なものと感じています。
 特に、定期公演にて、ベートーヴェンの「ミサ・ソレムニス」と「第九」を二日間にわたって連続上演するという試みは革新的で、このプログラムを成し遂げる実行力は、日本全国はもちろん、世界を見渡しても誇るべきものです。

 また、歌い手の繊細なニュアンスを聴き取り、見事に調和させるアンサンブル能力の高さには、
私たち自身が圧倒され、音楽家として大きな刺激と成長をいただきました。
 舞台の上で感じた彼らの誠実な人柄、そして音楽を共有した時間は、私たちにとって一生の宝物となっています。
 一つのオーケストラがなくなることは、単に「演奏会が減る」だけのことと思われるかもしれません。
 しかし、これほど高い志を持ち、市外から来る演奏家に「この街の文化レベルは凄まじい」と確信させる団体は、そう簡単に作れるものではありません。

 神戸市室内管弦楽団を解散するということは、神戸市で長年培ってきた財産を自ら手放すことに他なりません。
私たち4人は、この素晴らしいオーケストラがこれからも存続し、神戸市に豊かな音楽を届け続けられることを、心より強く願っております。

 

                                                     2026年4月26日

 

 

 

 

 

 

 


2025年11月15日(土)神戸文化ホール開館50周年記念事業 〈ベートーヴェン・ダブルビル〉『ミサ・ソレムニス』/神戸文化ホール大ホール
©米田フォト)

 

神戸市が世界に誇る室内オーケストラここにあり!
黒田博 声楽家

神戸という町の名を聞いて私の頭にうかぶもの、
お洒落なファッション、国際的な港、洗練された洋菓子やスイーツ。
2024年12月に神戸市文化ホール開館50周年を記念して、
ヴェルディ「ファルスタッフ」を上演。
稽古のために公演までの一ヶ月間、神戸に滞在した。
稽古以外の時間はあちらこちらを歩き回った。
町歩きで楽しかったのは昔からの商店街。
私が思い描いていた神戸とは違う、
温かく、活気に満ちた人達が生活する町があった。
30年前の震災から復興したエネルギーを感じた。
そして、この町は自前の室内オーケストラと合唱団を持っている。
「ファルスタッフ」オーケストラ合わせの折、
オーケストラから第一音が鳴った瞬間、
私は嬉しくて、思わず大声で笑いそうになった。
強烈なエネルギーに満ちた、しかし攻撃的ではない温かい音色。
まさに神戸室内の音が40年以上かけて熟成させたアンサンブル。
神戸市が世界に誇る室内オーケストラここにあり!と心の中で叫んだ。
あの時、ともに演奏できた喜びは今も鮮明に思い出す。 

音楽、芸術は人の命からは一番遠くにあるもの。
けれども人の心の一番近くにあるもの。
その宝物を神戸市は失ってはいけないと思う。

2024年12月21日(土)神戸文化ホール開館50周年記念オペラ ヴェルディ《ファルスタッフ》 ファルスタッフ役 /神戸文化ホール大ホール

 

ライブの音楽は、もう2度と蘇ることはない「今」を大事にする時間
-川口成彦 フォルテピアノ奏者

 昨年名古屋駅にて「喫茶 ボン・ヴォヤージュ」という看板の書体からしてレトロな店が新しく出来ていたのを発見しました。「新しく」と言ってもどうやら多くのお客様に愛されていたことからの20年ぶりの復活オープンのようでした。私はその時店に入ることは出来ませんでしたが、「最近やっぱりこういうレトロ趣味や懐古趣味のものがやたら目につくな」と思ったゆえに、すごい頭に刻み込まれていました。役所広司主演の2023年の映画『パーフェクト・デイズ』も思い出されます。主人公は令和の時代にも関わらずカセットテープで音楽を聴く時間を愛していました。そう言えば、若者たちにレトロブームが巻き起こっているというニュースも何年か前に見ました。今や平成まで「レトロ」対象で、画素数の荒い平成の中古デジカメが「エモい」ゆえに再注目する人も出てきているらしく驚きました。小学生がネットで音楽を聴くのではなく、「え、こっちの方がいいじゃん」ということであえてCDで音楽を聴く子もいるという話をしてくれた人もいました。そしてLPレコードも近年ますますファンが増えていると聞きます。

 もちろん人それぞれですが、「レトロ」関連の話題や物事を見聞きする度に、あらゆる人たちが「情緒」を追い求める時代になっているのだろうと思ってなりません。我々は昔と比べておそらく遥かに情緒が欠如した世界を生きているに違いないからこそ、情緒を自ら掴み取りにいかなければならないのかもしれません。生産性や機能性を重視するのであれば、人間はややこしい喜怒哀楽を伴う心をいち早く捨てて、電気ではなく血液で動くロボットと化した方が良いかもしれませんが、今の時代でも多くの人間はまだ人間でいようとしている気がします。

 神戸市室内管弦楽団が存続の岐路に立たされているという状況は、音楽という側面において情緒の炎が消えていこうとする未来を暗示する出来事の一つでしょう。2014年にやはり運営資金難などで歴史あるローマの歌劇場が潰れそうになるニュースに驚いた日も懐かしいですが、世界中でそんなことばかりです。日本でクラシック音楽を積極的に聴こうとする人は人口に対してかなり少数なので(本当か分かりませんが、5%と聞いたことがあります)、「神戸から電車に乗って他のオーケストラ聴きに行けばいいだけのことでは?」「オーケストラでなくとも音楽は聴ける」「YouTubeで十分」など色々な意見が出てくるだろうし、人それぞれ考え方や価値観は違うので何が正しいというわけでもありません。けれど、「それは確かに暗示している」のだと思います。

 ライブの音楽は録音とは違って、もう2度と蘇ることはない「今」を大事にする時間だと私は思っています。再現性のある情報に塗れた現代社会だからこそ、その価値について考える日が増えました。そして昔私の友人が言いました。芸術に触れる時間は人間が人間の心を思い出して、人間に戻る時間だと。なるほどなと思い、私はその考えを一人の演奏家として大切にしています。2022年秋に鈴木秀美先生の指揮と共に神戸市室内管弦楽団とフォルテピアノを用いて共演した思い出は今でも大切にしています。あの日神戸に集ったお客様と、もう二度と戻らぬ「今」を共有しました。

 「情緒」やら「心」やら「人間」やら。そのような美しい言葉で語ったところで何も解決に至らない複雑な状況と想像しますが、音楽や芸術「も」多くの人が大事に出来る余裕のある世界を切に祈るばかりです。今がたとえ難しかったとしても、そのような未来の在り方を一人でも多くイメージ出来る日が来ますように。


2022年10月1日(土) 神戸市室内管弦楽団第155回定期演奏会「秋のシンフォニー」/神戸文化ホール大ホール(©米田フォト)
〈演奏曲〉ショパン:ピアノ協奏曲第2番ヘ短調作品21


音楽の真意とともに楽しさを追求している楽団

-高関健 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 常任指揮者/
      仙台フィルハーモニー管弦楽団 常任指揮者/
富士山静岡交響楽団 首席指揮者

 神戸市室内管弦楽団が市民の皆様のご理解を賜り、これまで通りの演奏活動が続けられることを強く要望いたします。国内各地のオーケストラが、特にコロナ禍以降の難しい状況に苦心惨憺しながらも、それぞれ独自の活動を模索しています。その中で神戸市室内管弦楽団は、もっとも純粋に音楽の真意とともに楽しさを追求し得ています。神戸市混声合唱団とのコラボレーションも独特で、ほかに代え難い。音楽界全体にとってなくてはならない意義のある活動を、神戸の皆様が良く理解してくださることを心から希望いたします。継続こそ力です。私も皆様と共に神戸市室内管弦楽団の今後の活動を心より応援してまいります。
これからも音楽の素晴らしさを一緒に体験してまいりましょう。

 

オーケストラは地域と町のシンボル
-大友直人 京都市交響楽団 桂冠指揮者

 オーケストラは地域と町のシンボルです。その町の文化度を示す分かり易いバロメーターです。これは既にアジア諸国を含めた世界の共通認識です。国際都市神戸には日本を代表するオーケストラの1つがあるのです。長年にわたり立派な歴史を刻んできた名門神戸室内管弦楽団の活動は神戸の町に相応しく更に輝かしく豊かなものになるべきです。文化都市神戸市のイメージは先日来の報道で既に崩れ始めています。鈴木秀美さんという全国のオーケストラも羨む名指揮者を音楽監督に迎え、まさにこれから一層の飛躍が期待されている今、これを機会に神戸室内管弦楽団の再認識と力強い支援の輪が広がることを願っています。