定期演奏会シリーズ
没後200年ハイドンに捧げる1年
そして、18世紀の偉大な遺産は新しい命を得る
(平成22年3月5日:神戸文化ホール 中ホール/平成22年3月7日:紀尾井ホール)
指揮:ゲルハルト・ボッセ
ブロックフレーテ独奏:太田光子、宇治川朝政
クラシック音楽誌「音楽現代」演奏会批評 伊東雨音 氏
2006年に設立25周年を迎えた神戸室内合奏団は、音楽監督ゲルハルト・ボッセの指揮でハイドン・イヤーのための意義深い企画を提案する。ハイドンの先駆者であるバッハの息子たちの作品から、オペラを学んだ9男クリスティアン・バッハの交響曲変ロ長調作品21-1、次男カール・フィリップ・エマニュエル・バッハのフルート協奏曲ト長調Wq169、そしてハイドンの交響曲第83番ト短調「雌鳥」。
瑞々しく躍動する音楽はホールに別の空間を表出させ、高いアンサンブル能力とボッセへの楽員のリスペクト&共感が音楽をさらに深いものにする。一つずつの音が磨かれて響き、楽曲構造を見事に聞かせる。同時代を担いながら影響を受けハイドンさらにはモーツァルトへつながっていく音楽の系譜が、明快な演奏の中から見えるようだ。フルート独奏の小山裕幾は期待の若手で、ハイスペックな技量と正確な表現力で吹ききってみせた。
クラシック音楽誌「音楽現代」演奏会批評 倉林 靖 氏
音楽監督ゲルハルト・ボッセの指揮。前半は、シューベルトの四重奏曲「死と乙女」のマーラーによる弦楽合奏版、そして後半はシェーンベルク「浄夜」というプログラム。元から技量の高いアンサンブルなのだろうが、いい指揮者・指導者に巡りあうと如何に音楽が変わるか、を示す格好の演奏と思えた。素晴らしい、という言葉だけでは言い尽くせない程の、豊かな、まさに至高の音楽経験だ。前半のシューベルトで、八〇代半ばをこえたボッセが産み出す音楽は若々しく、冒頭から引き締まった響で求心的に進み、本質だけに肉薄し、甘ったるい情緒性など微塵もない。第二楽章の死への情景をはじめ、作曲者の心理に迫らない箇所は皆無なのだ。終楽章の息をつかせぬ展開も素晴らしい。これなら弦楽合奏版の方がいいかも。後半の「浄夜」も、世紀末的退廃というよりは曲の和声的もしくは形式的構成に客観的に迫る演奏で、シェーンベルクの本質を見事に描いていた。